"Holes" Louis Sachar ('98)
![]() | Holes Louis Sachar (2000/05/09) Yearling Books この商品の詳細を見る |
児童文学というと、瑞々しい自然や色とりどりのファンタジー空間に囲まれた、「豊か」で「多様」な世界で繰り広げられるものが多いと思います。子ども達の世界はそうあって欲しいという、大人の願望も含まれているのかもしれません。
けれどもルイス・サッカーの『穴』はその正反対。犯罪を犯した少年達を更生させるという名目のもと、来る日も来る日も、砂漠のような大地に穴を掘らせていくグリーン・レイク・キャンプの情景は、実に殺伐としています。
物語は、スニーカー泥棒の無実の罪をきせられた主人公のスタンリー・イェルナッツがグリーン・レイク・キャンプに連れてこられる所からはじまります。彼は、もともと運の悪い男の子。学校でもいじめられていたし、両親も努力しているのに暮らし向きが一向に良くならず…。それもこれも、4代前の祖父(no-good-dirty-rotten-pig-stealing-great-great-grandfather)にかけられた呪いのせいと諦めていました。
ところが、少年同士のタフな人間関係をサバイブしつつ過酷な穴掘り労働を続けていくうちに、穴掘りは更生のためだけではなさそうだ、ということが分かってきます。どうやら管理人は、何かを探しているらしい。その謎解きと、スタンリーの祖先たちの因縁やグリーン・レイクでかつて起こった出来事が絡まりあうミステリアスなストーリー展開が見事です。全部で50の短い章からなりますが、14章あたりを過ぎた頃から続きが気になってどんどん読書ペースが上がっていく、page turnerでした。
様々な困難を体験したスタンリーがこのように考える場面があります。
It occurred to him that he couldn't remember the last time he felt happiness. It wasn't just being sent to Camp Green Lake that had made his life miserable. Before that he'd been unhappy at school, where he had no friends, and bullies like Derrick Dunne picked on him. No one liked him, and the truth was, he didn't especially like himself.
He liked himself now.
最後にしあわせを感じたのはいつだったっけ?スタンリーはそれが思い出せないことに気がついた。人生がみじめになったのは、グリーン・レイク・キャンプに送られたからではなかった。その前から、学校でもしあわせじゃなかった。友達もいなかったし、デリック・ダンみたいないじめっ子にいじめられた。誰も僕のことを好きじゃなかったし、本当のところ、自分でもとくべつ自分のことが好きではなかったんだ。
でも今、スタンリーは自分が好きになっていた。(拙訳)
自分で自分を好きになるということ。
当たり前なようでいて、実は、いくつもの穴を掘るという一見無意味で過酷な経験をくぐり抜けないと、そこにたどりつけないこともあるでしょう。日本の子ども達のまわりにもいじめなどの問題がたくさんあります。でも、なんとかスタンリーのように生き抜いて、まず自分で自分を好きになって欲しい。簡単なことではないけれど、そう切に願います。
手元の版では本文233ページ。いわゆる子どもっぽい児童文学が苦手な方でもミステリー感覚で読み進められるのではないでしょうか。
ちなみに本書はアメリカ児童文学界の最高の栄誉であるNewberry Medal(ニューベリー賞)を1999年に受賞していますが、、前回ご紹介した『シャーロットのおくりもの』("Charlotte's Web")も1953年にニューベリー賞オナーブック(上位入賞作品)に輝いています。
☆作者ルイス・サッカーについて(英語Wikipedia)
翻訳版はこちら。
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2007.02.07 15:30 | リーディング(初級編) | トラックバック(0) | コメント(4) |
"Charlotte's Web" E.B. White ('52)

Charlotte's Web
↑表紙は映画仕様になってますが、中の挿絵はGarth Williams(ガース・ウィリアムズ)です。
この冬、映画「シャーロットのおくりもの」が公開されていたので、原作本を手に取ってみました。残念ながら、私は子ども時代に翻訳版にもオリジナル版にも出会うことなく大人になってしまいましたが、同じ著者の"Stuart Little"(「スチュアートの大ぼうけん」)と並んで、アメリカ児童文学の名作ですね。
E.B. White (Elwyn Brooks White, 1899-1985)は、長きにわたって雑誌The New Yorkerでコラムやエッセイを書いていた人です。共著で"The Elements Of Style"(「英語文章ルールブック」)というロングセラー本もあり、"No one can write a sentence like White"と言われるほど彼の文章には定評があったようです。(こちらのサイト参照)
"Charlotte's Web"の文章も、無駄なく適確に情景や心理を描きとりつつ温かく、まさに"crisp, graceful, relaxed style(歯切れよく、優雅で、くつろいだ文体)"(上記サイト)だと思いました。
牧場という舞台設定から、あまり馴染みのない単語がいくつか登場しますが、基本的には読みやすい文章です。
豚のウィルバーは発育不全のため、生まれてすぐに処分されそうになりますが、牧場主の娘ファーンの懇願で命を救われます。おかげで元気に成長したものの、クリスマスには食べられてしまう予定らしいという噂が囁かれます。ウィルバーを救うため、親友の蜘蛛、シャーロットがとった作戦とは……。
作戦が成功した後、シャーロットはウィルバーにこう語りかけます。
Winter will pass, the days will lengthen, the ice will melt in the pasture pond. The song sparrow will return and sing, the frogs will awake, the warm wind will blow again. All these sights and sounds and smells will be yours to enjoy, Wilbur---this lovely world, these precious days...
次の春を迎えられること。この世界の中にいられて、貴重な日々を過ごせることの大切さ、ありがたさ。児童文学ではありますが、これをより強く実感できるのは年齢を重ねた大人の方かもしれません。
友情についても同様です。(↓括弧内はskysongが補足)
"Why did you do all this to me?" he(Wilbur) asked. "I don't deserve it. I've never done anything for you."
"You have been my friend," replied Charlotte. "That in itself is a tremendous thing."
tremendous[形]ものすごい、途方もなく、非常に素晴らしい
[ラテン語tremendus(tremere震える+-endus未来受動分詞語尾)=震えるほどの]
「すごい、素晴らしい」という意味の語はたくさんありますが、その中でもtremendousを持ってくるところに、心が震えました(涙)。
You have been my friend.と完了形を使っている所も、意味ありげで熱いものがこみあげてきます。これが現在形You are my friend.だとかなり違うニュアンスになってしまいますから。
映画の方はまだ見ていませんけれども、ネットの情報では原作にほぼ忠実に映画化されているようです。(「スチュアート・リトル」は映画でかなり違うお話にされていてビックリしましたが。)映画を見てから原作を読むのもいいかもしれませんね。
↓翻訳版はこちら。
| シャーロットのおくりもの ガース ウイリアムズ、E.B. ホワイト 他 (2001/02) あすなろ書房 この商品の詳細を見る |

2007.01.21 14:55 | リーディング(初級編) | トラックバック(0) | コメント(0) |



